logo

続・質問帳

若林隆壽

質問

お寺や宿坊(しゅくぼう)などで出されるお料理を、なぜ「精進料理(しょうじんりょうり)」というのですか。

回答

若林隆壽

 人間が生きていく上で必要なものとして、よく「衣食住(いしょくじゅう)」の三つがあげられます。大きな災害に見舞われたときなどによくわかりますが、どれか一つでも欠けたら大変なことです。衣服、住む家、どちらもなくてはならないものに違いありません。中でも「食」は直接、命の存続にかかわるものですから一番切実です。
 仏教では、菩薩(ぼさつ)(いずれは仏さまになって人々を救おうと考える人)の修行(しゅぎょう)法として、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」といって、布施(ふせ)(施(ほどこ)す)・持戒(じかい)(慎(つつし)む)・忍辱(にんにく)(忍(しの)ぶ)・精進(しょうじん)(励(はげ)む)・禅定(ぜんじょう)(身心を鎮(しず)める)・智慧(ちえ)(学ぶ)という六つの修行が定められていますが、「食」はその助けにもなる一方、邪魔(じゃま)にもなるものだと考えられてきました。何も食べなければ励(はげ)もうにも力が出ませんし、逆にニラやニンニクなどの刺激物(しげきぶつ)や肉などの入った「スタミナ定食」ばかり食べていたのでは、興奮(こうふん)し、欲望が次々と沸(わ)き起って修行になりません。
 そうしたことを、よくよく考えて、寺院や僧坊(そうぼう)で、豆腐や湯葉(ゆば)、納豆などの大豆タンパクを上手に使い、仏教で固く禁じられた殺生(せっしょう)を犯(おか)すことなく修行僧を励まし、かつ修行の妨(さまた)げにならぬように工夫されてきたのが「精進料理」なのです。
 「薬膳(やくぜん)」という言葉が示すように「精進料理」は、単に肉を用いない「ベジタリアン(菜食主義者(さいしょくしゅぎしゃ))用」というだけでなく、修行を円滑(えんかつ)に進めるための薬でもあるのです。

その他の質問<バックナンバー>

カードの画像1

終活

カードの画像1

宗派

カードの画像1

墓地継承

質問一覧


2007 © 仏教書専門店 中山書房仏書林