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続・質問帳

若林隆壽

質問

「お盆(ぼん)」は日本だけの風習(ふうしゅう)ですか。

回答

若林隆壽

 

   両手にもてるだけのおみやけを抱(かか)え、長時間すし詰(づ)めの帰省列車(きせいれっしゃ)に揺(ゆ)られ、くたくたになって故郷の実家にたどり着く。そこで「兄(あん)ちゃん、お帰りっ!」といって転(ころ)がるように飛び出してくる弟の声を聞いたとたん、仕事でのいやなことも、何もかもが洗い流されて、「あーっ、がんばってきてよかった」と思える、としみじみ語ってくれたのは、ある個人タクシーの運転手さんでしたが、「お盆」の頃には、日本中のあちこちで見られる光景でしょう。
「お盆」は、もともとは『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』というお経にある、お釈迦さまの弟子の日連尊者(もくれんそんじゃ)が、死後餓鬼道(がきどう)に堕ちてしまった母親を、雨期の修行を終えた僧たちとともに救い出す、という孝行説話(こうこうせつわ)に由来(ゆらい)し、7世紀の初頭にはわが国でも行われていたといわれています。
  仏教の伝来(でんらい)とともに中国・朝鮮経由で伝えられた行事であり、当初は宮中(きゅうちゅう)での年中行事でしたが、仏教が民衆に広まるにつれ、日本古来の祖先崇拝(すうはい)の考えと結びつき、生活に溶け込んだものになっていきました。
そういった意味では、「お盆」は輸入された行事でありながら、日本人の祖先を想(おも)うやさしい気持ちが、大事に大事に育ててきた行事といえるでしょう。
ご先祖さまを慕(した)い、亡(な)き人を偲(しの)ぶことで、癒(いや)されているのは、実は生きているわたしたちの方なのかもしれませんね。

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